夕焼けのこと

 こちらに来てからまだ一度も、美しい夕焼けというものを見ていない。

 地元ではほとんど毎日夕焼けを見ていた。田舎だったから建物が邪魔をしなかったのだろうか。山に橙色の光が喰い込んでいく様を、足を引きずりながら見ていた。

 この街ではよく月を見ている。不思議に月が大きく、明るいのだ。なんてきれいな夜だろう、と思う晩の、多いこと。それでも、どうも夕焼けが恋しくなる。息のしやすい朝を恋うように。体ににじむ色の光を。